📖 夜空のどこかにある、「ねむり製作所」

夜空のどこかにある、「ねむり製作所」 物語

ようこそ、『月灯りの休憩所』へ。管理人のDreamSoulです。

今夜は、夜空のどこかに浮かぶ小さな工場を舞台にした、
静かな物語をお届けします。眠りに向かう前のひと休みに、
ゆっくりと読み進めていただけたらうれしいです。


🌙 夜空のどこかにある、「ねむり製作所」

夜空のずっと奥。
人の目には見えないその場所に、
小さな工房があります。

そこは「ねむり製作所」。
世界中の人たちの“眠り”を作る場所です。

日が沈み、街の明かりが少しずつ消えていくころ、
工房の煙突からは、やわらかな光の煙がのぼります。
それは、今日もたくさんの「よい眠り」が仕上がった合図。

工房の中では、
小さな瓶や、金色の粉、
ふわふわした夢の種が並んでいます。

職人たちは、静かな音楽を流しながら、
ひとつひとつ丁寧に、眠りをこしらえます。

ある瓶には、甘いミルクのようなやすらぎが。
別の瓶には、ラベンダーのような安堵が。
そして、少し透明な瓶には、涙をやさしく包むような夢が。

眠りは、それぞれ違う香りと色をしていて、
その人にぴったりのものが、夜ごと届けられるのです。

工房の扉が静かに開くと、
夜風がひとすじ、光の粉をさらっていきます。
それは地上へと降り注ぎ、
まだ眠れない誰かの枕の上に、そっと落ちます。

粉が触れた瞬間、
呼吸は少し深くなり、まぶたがゆっくりと重くなる。
やがて心が静かになり、
世界の音が遠くかすんでいく。

——そのとき、ねむり製作所の明かりが、
そっとひとつ消えます。

「今夜も、いい眠りができたね」
誰かのそんな声が、遠くで聞こえた気がしました。

🌙 あとがき

「ねむり製作所」という場所を思い浮かべるとき、
わたしの頭の中には、
ひとりひとりの眠りを、黙々と、でもやさしく支えている
名もなき手仕事のようなイメージがありました。

私たちはふだん、
「ちゃんと眠らなきゃ」「早く寝なきゃ」と、
つい自分に厳しくしてしまいがちです。
そんなとき、夜空のどこかで
自分のための眠りをせっせと用意してくれている工房がある――
そう想像してみると、
少しだけ肩の力が抜ける気がします。

物語の中に出てきた、ミルクのようなやすらぎや、
ラベンダーのような安堵、
涙を包む透明な夢は、
本当はどれも、私たちの中にもともとあるものなのだと思います。
ねむり製作所は、それらをもう一度そっと集め直して、
「今夜はこれを枕元に置いておこう」と手渡してくれる場所、
というイメージで描きました。

もし、この物語を読み終えたあと、
少しだけ呼吸がゆっくりになったり、
「今日はここまででいいか」と思える感覚が
心のどこかに生まれていたら、
それがこのお話の、小さな役目かもしれません。

今夜の物語が、あなたの夜に
すこしでもやわらかな時間を届けられていたらうれしいです。
それでは、また別の夜のお話でお会いしましょう。

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