📖 言葉にならない星の会話

言葉にならない星の会話 物語

ようこそ、『月灯りの休憩所』へ。管理人のDreamSoulです。

今夜はストーリー回。
雨上がりの森のコテージで、火の揺れと、星の瞬きに耳を澄ませる――
そんな静かな時間のお話を置いていきます。
日々忙しい毎日の中で、少しでもやさしく静かな時間になればうれしいです。


🌙 言葉にならない星の会話

夜の森の小さなコテージ。
丸太の壁に、暖炉の火がやわらかく揺れている。 言葉にならない星の会話

低い椅子に、青年が静かに腰掛けていた。
膝の上には開きかけの本。けれど視線は文字ではなく、
炎の奥でゆれる光を見つめている。 言葉にならない星の会話

外は、少し前まで雨が降っていた。
いまはすっかり止んでいて、
濡れた土と木のかすかな匂いだけが、窓の向こうに残っている。 言葉にならない星の会話

窓辺には、ブランケットをかぶった少女。
ガラス越しには、雲の切れ間からいくつもの星がのぞいている。
さっきまでの雨雲が遠くへ流れたあと、
空だけが静かに澄みはじめていた。 言葉にならない星の会話

「星ってさ、何か話しているみたいだね」
少女が、炎を壊さないような小さな声でつぶやく。 言葉にならない星の会話

青年は少しだけ息を吐き、
炎がぱちりと鳴る音と重なる。 言葉にならない星の会話

「うまく言えない気持ちを、ああやって空に預けてるのかもね」 言葉にならない星の会話

コテージの屋根を打っていた雨音は、もう聞こえない。
代わりに、森の奥から、雨上がりのしずくが落ちる小さな音がときどき響く。
世界の輪郭が、ゆっくりと柔らかくほどけていく。 言葉にならない星の会話

「話しかけたら、返事くるかな」
少女が星を見上げたまま、もう一度つぶやく。 言葉にならない星の会話

青年は窓の外を見ずに、
炎の明るさの変化を追いながら、
少しだけ首を傾ける。 言葉にならない星の会話

「言葉にはならないけど……
 静かになれるなら、それが返事なのかもね」 言葉にならない星の会話

ふたりはそれきり、会話をやめる。
代わりに、火と、星の瞬きと、遠くの水音だけが、
ゆっくりとテンポを合わせていく。 言葉にならない星の会話

炎が弱まり、部屋がひと呼吸ぶん暗くなる。
それを追いかけるように、窓の外の星のひとつが、
すこしだけ強く光る。
すぐに、また淡くなる。 言葉にならない星の会話

少女のまぶたは、星のまばたきと同じ速さで重くなり、
青年の指先は、本の端から静かに離れる。 言葉にならない星の会話

言葉にならないまま、
心の底に沈んでいたものが、すこしずつほぐれていく。 言葉にならない星の会話

暖炉の火は、小さな円の中で丸くおさまり、
外の水音も、やがて遠くのやさしい気配に変わっていく。 言葉にならない星の会話

会話はもう続いていないようでいて、
部屋中のすべてが、まだ静かに話し合っている。

いつのまにか、
青年も少女も、その輪の中に溶け込んでいた。
星の瞬きと同じリズムで、
意識だけが、やさしい暗さの奥へと落ちていく。 言葉にならない星の会話


🌙 あとがき

雨のあとにだけ現れる静けさがあります。
音が消えたのではなく、音が“ほどけて”遠くへ行ったような静けさ。

この物語では、言葉で答えを出すのではなく、
火の揺れや星の瞬きのような「小さな合図」に、
心を預けてみる夜を描きました。 言葉にならない星の会話

言葉にならない気持ちは、
無理に言葉にしようとすると、かえって硬くなることがあります。
でも、静かになれたなら――それはきっと、返事のひとつ。 言葉にならない星の会話

今夜のあなたの部屋にも、
小さな火や、遠い星のような“合図”が残っていますように。

それでは、また別の夜のお話でお会いしましょう。

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